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写真家の物語 ~テラウチマサトが見たイタリアの古都~

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 でも人ってついつい、ルーティンの罠にはまってしまうんですよね。同じ電車に乗って、同じ道順で職場に通い、同じ方法で仕事をするみたいな。それでは未来は変わるわけがないなと思ったんです。だから、海外で仕事をしようかなとも思ったし、カメラも変えてみようかなと思いました。普段やっていない事をやってみる事が、自分にどんな影響を与えるのかなって。

 すごく不思議なことなんですが、普段割と大きいカメラが好きで、今回α7という小さなカメラを持って旅に出たところ、いつもと行動や、行動範囲が変わったんです。じっくり構えては撮るんですが、撮影に移るスピードがすごく早くなったり。

 ここで大事なのは、自分は何も変わっていないのに、選択肢を変えた事で、違う結果が起こってきた。それは、僕の中で凄い感動だったんですね。写真家の物語の中で今回一番言いたい事は、選択肢を変えた時にこんなにも何かが変わるんだってことに気づいたことです。

 僕にとってカメラというのは道具です。だから、このカメラしか使わない主義ではなくて、TPOにあわせてカメラを使い分けたいタイプなんです。一つのカメラを使い続けるのもいいかもしれないけれど、家族でレストランに行くのに大型バスを使う必要はなく、近所の八百屋に買い物にいくのにスポーツカーは必要ないように。カメラもそういう風に持てたらいいなぁと思っています。

 α7は、そういう意味で今回の旅にとって最適なサイズだったと思っています。そして最も大事なことを言えば、プロとしてホームランを打たなくてはいけないから、フルサイズの撮像素子が欲しい。このわがままを達成してくれた点が素晴らしかったと思います。

 冒頭、挑戦をすることの大切さについて話をしました。何かに挑戦しているという事を僕は一番重要視しています。カメラにおいてもそのブランドの気構えというのがとても重要です。「そんな想いで創ったのか!」そんなことに感銘し旅をしたイタリアでした。

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テラウチマサト

1954年生まれ。日本実業出版社を経て1991年に独立。ポートレイト、風景、プロダクトから空間まで、独自の表現手法で常に注目を集める写真家。中でも、ポートレイト作品においてはこれまで6000人以上の俳優、モデル、タレント、経営者などの著名人を撮影。テラウチにしか撮らせないという声も多い。また、風景作品では、その場所の魅力を着実に捉える力を評価され、行政からの撮影要望も多い。モノやコトの“隠れた本質”を捉える着眼点や斬新な表現手法に、イベントプロデュースから、町興しのオファーも集まる。写真家としてのクリエイティビティを活かした幅広い創作活動を得意とする。米国マサチューセッツ工科大学で講演、2012年パリのユネスコ本部から招聘され写真展示するなど、海外からも高い評価を得ている。
http://www.terauchi.com/


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